John Maynard Keynes(JMケインズ)
生誕: | 1883年 |
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死没: | 1946年 |
有効需要
経済学において不況時における代表的な考え方は2つ。「伝統的な経済学(サプライ・サイド経済学)」と「ケインズ経済学」だ。
伝統的な経済学(サプライ・サイド経済学)
- 石油が不足して価格が上昇し、生産に支障をきたす
- 労働者教育が不十分でいい製品がつくれない
- 戦争で設備を壊されて生産できない
サプライとは供給のこと。すなわち、供給する側に何らかの理由があって景気が悪化し、不況となるという考え方だ。
この考え方だと、実証するのが容易である。たとえば、以下のような例が挙げられる。
- 石油の値段が上がった(石油の不足で実証できる)
- 労働者が働かない(労働時間の減少で実証できる)
- 教育が不十分だ(テストの実施で実証できる)
ケインズ経済学
逆にケインズ経済学では、生産する側には何も問題がなく、むしろ消費する側に問題が起きて需要が縮小し、これを起因として不況になっていくという考え方である。
- 投資の縮小…企業が設備投資を減らしたため、工場や生産機械など設備投資関連の需要が縮小する
- 消費の縮小…投資の縮小が出発点となり、消費の縮小となる
これらは「企業が投資をしなくなること」が需要の縮小につながるという考えに基づいている。
なぜ投資が縮むのか?
人々はお金を蓄えようとする。すると証券や債券にお金が回らなくなる。これにより債券の利回りが上昇。市場の金利も高くなる。企業は高い金利ではお金を借りなくなるため設備投資を絞る。すなわち投資が縮小する。
将来の見通しに対して、経営者が非常にネガティブになってしまうために投資が縮む。これが不況が起きる原因だと考える。
対策
ケインズは不況対策として、公共事業による財政政策によって需要を増やし景気を浮上させることを提唱した。ところが、「伝統的な経済学」の考えでは、財政政策は効果がないとされている。
民間企業が投資を行なえば、極力無駄を排し、効率を心がけるのに対し、政府が投資を行なうと非効率で出来が悪いというのが伝統的な経済学の考えである。
ケインズが主張する「乗数効果」
ケインズはそれでも財政政策の有効性を説いた。「2兆円の公共事業を行えばGDPは最低でも2兆円増加する。うまくいけばさらに何倍のも効果がある」というのである。
さらには「穴を掘って、また埋めるような仕事でも失業手当を払うよりもずっと景気対策に有効だ」とすら言い切っている。
「乗数効果」の是非
大阪大学の小野善康教授の論文『乗数効果の誤謬』では、ケインズの乗数効果を全否定している。
しかし景気対策にはならないが、雇用対策にはなるため財政政策がムダだとは言い切れないのも事実である。失業して困っている人たちが公共事業で仕事をするのだから、国全体から見れば立派な雇用対策になるという意見もある。
雇用対策
失業者へ給付金を支給するだけでは、それで終わってしまう。いわゆる「良い公共事業」というものをもっと増やして税金を有効に使うことが将来にとってプラスの効果がもたらされる。
- 学校
- インフラ整備
- 下水道
- 電柱を地下に埋める
おもな書籍
雇用、利子および貨幣の一般理論 (上)経済学の歴史に「ケインズ革命」と呼ばれる一大転機を画した作品。資本主義の抱える大量失業と不安定な経済循環への処方箋として、雇用と有効需要、利子率と流動性とを組み合わせた「一般理論」を論じている。 | |
雇用、利子および貨幣の一般理論 (下)上記の下巻。 | |
ケインズ全集 第8巻「確率論」確率を数学ではなく論理学の一分野として捉える論理確率主義の立場をとって、確率や不確実性に関する哲学的問題について広範な考察を行なった1冊。 |